王子、勇者になる。

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服などを丁寧に鏡の前に置くと、ミッシェルは「ごゆっくりなさいませ」と言って出ていった。 ミッシェルに着替えを手伝わせても良かったんだが、生憎今日はもう時間がない。 嫌々ながらも、俺は召使いによって王子服を着させられる。 もうすぐクソッタレパーティの始まりだ。 「おいミッシェル、入っていいぞ」 着替えが終わると、召使いたちはミッシェルと入れ替わるようにして部屋を後にする。 ミッシェルは、丁寧な手付きでブラシと金の冠を持って入ってきた。 「コーネリアス様、そちらの椅子にお掛け下さい」 「ん」 俺は言われた通り、大きめの三面鏡の前に座る。ミッシェルはその後ろに立ち、慣れた手付きで俺の髪をブラシでとかし始めた。 この城の中で、こいつのブラッシング技術の右を出る物はいない。 気持ち良すぎてついつい寝てしまいそうだ。 「ミッシェル、やはりお前のブラッシングは流石だ。褒めてやろう」 「そのようなお言葉、勿体無き幸せで御座います」 ブラシの手を止めず、表情を崩さないまま会釈するミッシェル。 「昔からお前のブラシの腕は評判だからなぁ?」 「いえ、それ程では御座いません。ですがコーネリアス様と…あと、エイドリアン坊ちゃんがいつも喜んでくださり、私も嬉しいです」 「ファッ!?エイドリアンだと!?」 「ええ。どうかなされましたか?」 いきなり大声を出した俺に、ミッシェルは表情一つ変えずに首を傾げている。 エイドリアン…。まさかエイドリアンにまで奉公していたとはな…。 ミッシェルは俺だけに仕え、俺だけの言うことを聞くやつだと思っていたのだが…。
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