167人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が先輩に襲われたなんて、千広に分かる筈ないのに、子供みたいにキレて、襲うなんて……。
これじゃあのマゾ野郎とやってることが変わらないだろ俺!
急いで顔を離すと、千広の苦しそうな息遣いが聞こえて、途端に申し訳なくなった。
「…………ごめん」
こんな一言で許されるわけないのは分かってる。でも今の俺には他に言葉が見当たらない。
するとこちらを見ていた千広は、なんでもないかのように笑って
「あー、誰だって1度は間違ってチューしちゃうこともあるよ。大丈夫思春期だもの。ノンケの男同士でもふざけてキスするなんてよくあるよくある」
なんて言ってきた。
「そんなわけで、俺は気にしていないので! 逆に玲くんとこんなおふざけできるくらい仲が深まったってことよね!?」
明らかに気を使っているであろうコイツを見て、なんだか無性に抱きしめたくなった。
こんな無理した笑顔をさせてるのは俺なのに。
無意識に背中に回そうと手を動かした途端、千広の腹からなんとも情けない音が鳴った。
一瞬時が止まる。
「あっ! カレー作ったんだった! 玲くんほらもうカレー食べよ! ほらほら!」
千広は晩御飯の存在を思い出したのか、脚をバタつかせるので上に乗っていた俺も退く。
.
最初のコメントを投稿しよう!