悪意と善意

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北山くんとは2人で居たくないから、こういうズカズカ来る人に助けられる。 眉間のシワを指で伸ばすと、間抜けな表情になる。 「…お前は、喧嘩売ってんのか? 」 守屋くんの声が低くなるけど、彼が私のイタズラを受け入れてくれるのを知っている。 「怒った顔に開いた眉間って、締まりないね。」 ぷぷぷっと笑ながら言うと、その手首を掴まれ、上に引き上げられた。 私より少し背の高い彼の腕は、ちょっと長め。 爪先立ちにさせられる。 「ごめんって。今度は、ちゃんと行くからさ。今日は、許して?」 ぱっと離された手首。 ヨタタっと、ふらつく身体を後ろにいた北山くんがキャッチする。 オイオイ…。 ま、北山くんなら、私じゃなくても抱きとめるんだけど。 私には、触らない方がいいよ。 守屋くんが見てるから。 部長さまに筒抜けだよ? 守屋くん憧れの…従姉妹に。 ま、気にもしないけど、私は。 パッと北山くんと離れ、小さくありがとうとごめんなさいを伝える。 何事も、自然にすればいいんだ。 それをどう捉えるかは、個人の自由。 「もう少し、優しく扱ってもらえます?壊れ物なんですけど。」 嫌味っぽく言うと、全てが冗談になる。 暗黙のルール。 「あっそ。以後気をつけますぅ~。…でも、飲み会ずっと来てないだろ?活動も来てないし、タイミング見て来ないと出辛くなるぞ。」 だから、副部長なんだよね。 「…ん、ありがとう。近いうちには…行くよ。」 きっと行かないのを知ってるんだろうけど、守屋くんの表情は崩れない。 いろいろあっても、心配されるのは、悪くない。
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