悪意と善意

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おかしな気持ちの日は、バイトでも上手く立ち回れない。 ちょっとした失敗を繰り返す。 そして、独り反省会。 自分の価値が、底辺を越えて地下へと行く。 無理に愛想笑いを振り撒いて、心底疲労。 何にそんなに、自己嫌悪しているのか…。 些細なミスの連発くらい、仕方ないか…と諦めればいいのに。 そんな日なんだとか、寝不足だとか、明日はお祓いにでも行くか?とか。 自分じゃない何処かに理由を見付けるのも、たまにはいいのに。 追い詰めて、気持ちが落ちて行くのを止める術を知っているのに。 凹み続けて、ちょっと浸りたいのかもしれない。 本当に苦しいトコは、見ないフリしてるから。 「これじゃ、どれも上手くは回って行かねーなぁ…。」 小さな独り言を、ぽろんと呟いてみる。 疲れ果てて、自転車に跨がる元気も無い。 トボトボと、自転車を押して歩く。 タイヤの回る音や、自分の足音が、静かな住宅地に響く。 冷たい風が、服から出た部分を冷やし、少しずつ真っ直ぐになっていく気持ち。 失敗は、繰り返さない。 急変して、出来る女にはなれそうもないから、今は…それしかない。 当たり前の結論に至り、何をぐるぐると失敗した事を思い出しているのか…。 落ちた気持ちの隙間から顔を出しかける北山くんと、拓海。 そろそろ、彼らに浸るのも、塞ぎかった穴をまた開けて覗くのも、やめにしないと…。 立ち直ってみたり、また開けて覗いてみたり。 なかなか、痛い趣味だな…。 気持ちをチクチクさせて、自分の居る場所を確認する。 何も持たない自分だから、そうでもしないと、何処に居るのか分からないなんて。 虚し…。 身体も心も寒いなぁ…。
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