見えない壁

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帰宅した母に、カーテンを見せる。 「えっ?何したらこんな事になるかな…。」 だよね? 私だってそう思うさ。 「なんかね、私が電話しながら窓の外見てたら、勝手に入って来た拓海に自殺しようとしてるのと間違われて…。カーテンごと部屋に引っ張られたら、破けた。」 事実を有りのままに。 嘘は通じないし、器用な嘘をつけるほど女優でもない。 「…。」 無言の母。 何か感じてくれる? 「でも、縫えば直りそうだから、ミシン借りるね。そろそろ私も自分のミシン買おうかなぁー。」 奇妙なカーテンと私の唇の傷。 忙しい母と事実を伝える娘。 これだけ状況が揃っている。 でも…。 「拓海ちゃんは、おっちょこちょいねぇー。でも、勘違いでも、守ろうとしてくれたのなら、お礼しとこうかしら?」 帰宅前に買って来た野菜を冷蔵庫に仕舞いながら、明るく話す母。 うん。 拓海は、優しいおっちょこちょい。 悪さをするはずはないから…。 拓海にかかった見えないフィルターが、現実になる。 そう、お隣の優しいお兄ちゃん。 私の心にあるモヤモヤは、消さなくてはいけない。
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