揺らぐ男

10/20
前へ
/83ページ
次へ
何かしら喚いてた女の声を振り払って 静かな自分の空間に逃げ込んで やっと一息つけた頃に 見下ろした彼女の部屋は真っ暗で 積もり溜まる欲を吐き出したくて 抱きしめて、隅々まで味わって そんな願望は不健全そのもので それこそ本能のままに 動かす手は虚しくて ナニやってんだ… 終えた結果に自己嫌悪に陥って 汚したいわけじゃないのに その行為を何度となく繰り返してきた 手が届きそうな距離に彼女がいるのに 道路隔てた距離は遠くて 泣きそうになった どうやって これを縮めればいいのか どうやって 彼女に伝えればいいのか 答えは簡単な筈なのに それが怖くて堪らない 適当にやってきた男のこれ 酔いが足らない脳に、無理やりアルコールを足して 今日はこのまま酔っ払って寝付こうと思った けど やっぱり思い出すのは彼女のことばかりで これが切ないという感情なのか やっと眠りに誘われ浅い意識の中で またチラつくノイズ 泣いてる…女が… 笑ってる……男に… 呼び掛ける…名前… あぁ… 俺はその名を…知っている…
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加