揺らぐ男

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次の日は思ったほどスッキリ目覚めて 重かった身体と引換に 寝落ちする記憶は、綺麗さっぱり失われていて 大事な事を思い出したような気がしたのに また遠のいてしまった とっくに昼過ぎてて カーテンを開けば、向こう側も窓が少しだけ開いた状態 時間を重ねて垣間見える姿に緩んで 男の影が無いことに、安堵する 今までその部屋で 彼女しか見たことはなかった 友人らしき姿さえ そこだけが彼女の領域で 何者さえ寄せ付けないそこは 総ての煩わしさを拒んでいるような その中で意識してもらえなくとも どうしても どうしても知りたい 心の奥に眠ってるパーツが少しでも鍵になるのならば それを手に入れなければ 仕事関係に、寝てみた女 友人の友人まで記憶を探り寄せても それを見つけられなかった この街じゃないのか… 出逢ったのがもっと前だった、としたら ここから意識を田舎町へと飛ばして とりあえず休暇は実家に帰るか ここには持ち込まなかったアルバムを思い浮かべて 幼い頃からの時間を遡ってみようかと
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