揺らぐ男

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いつもなら長期休みでも帰省しない愚息の連絡に 帰ると伝えて驚いた母親の通話を早々と切り上げて 遠足を待つ小学生みたいに荷物を纏めた やってきた週末に 仕事着のスーツのままに居酒屋に行って 適当な話と腹を満たして 住み慣れた場所から電車で三十分 飲み屋ばかりの繁華街 連れて来られたのは雰囲気ある立ち飲みBAR 「まだ来てないな」 そう呟いた奴に習って カウンターでビールを注文し、受け取って空いているテーブルへ 「ここさ、俺も友人から教えてもらったんだけど 」 大人の為の社交場だと小声で説明を受けて 見渡せばある程度の年齢と地位があるような男と女の姿がちらほら あからさまな出会い系じゃないから安心しろと 付け加えられて だからか 値踏みされているような視線に 「窓際の女、こっち気にしてるぞ」 と、耳打ちされて 颯爽と行動に出た女が俺達の側へ 「御一緒しても」 愛想笑いを浮かべた女に魅力なんて感じる訳もなく やんわりと断ろうかとそう思っていた時 「来た、彼女」 真っ直ぐに向ける奴の顔を追って行けば 息を忘れるほどの…女
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