揺らぐ男

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ベッド下に脱ぎ散らかしてあった服は 綺麗に片付けてあって 急いで身を整えてから部屋を後にした 帰る場所は分かっているから すぐに追いつけなくとも良かったけれど 精算する時間までもがイラついた 少しだけ奮発したホテル 安っぽい所なんて 彼女には使いたくなくて あの裸体を拝めただけでも上々か やっと後ろ姿を見つけ出して 一定の距離を置いて眺め歩いた 深夜までいかない時間だけれど 男がすれ違うたびに注意深くなって その舐めるような視線に嫉妬した やがて駅に着いて 同じホームに立つことも出来ずに 目立たない離れた物陰にデカい身体を隠し やってきた車両は一つ隣に乗り 俯く横顔を見ていたら 昔、こうやって何度か見てたなと思い出す 現在も変わらずに こんななのかと 何で忘れてたんだろう あの頃は恋だと無自覚だったからか 今思えば、あの時から彼女に惹かれていて それを認めようとしていなかった だって 彼女は アイツの彼女 だったから
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