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静止した殺風景な部屋
必要最低限の物しかないこの部屋に
少しだけ開いている窓からの風で、ブルーのカーテンが揺らめいた
「時間…か…」
床にそのまま寝転がっていた身体を起こし
テーブルの上の煙草と携帯を掴んで
陽が落ちて薄暗い部屋からベランダに移動した
片肘をついて寄りかかり、視線を流すのは道路を挟んでの向かいマンション
ここより一つ下
三階の右隣
カーテンを引くことなく漏れている灯り
それを確認してから煙草をくわえた
吐き出した煙はゆっくり舞い上がり、そして溜め息ひとつ
ストーカーかよ…
吐き出した煙と共に漏れた言葉
それは暗闇に吸い込まれて消えた
指先の煙草が半分くらいに短くなって
やっと登場した彼女の姿
理解してるのは
引き込まれる彼女に狂わされている自分と
月ほどまでに遠い距離感
欲しい欲しいと
貪欲なのに
どうやって近づくかだとか、あの肌はとか
思案しては薄れていく
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