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「ごめんなさい」
甘さのない声色に、何かが引っかかった気がしたけれど
とりあえず頭を下げてレジに向かい
小銭と引き換えに受け取った物をポケットに突っ込んだ
外に出て、また歩き始めて
少し前を歩くのは、さっきぶつかった女で
綺麗な横顔に、後ろ姿は細身でスタイルも良さそう
でも、俺の好みとは違う大人の女
まぁ、あれだけの上物ならば一度手合わせしてみたいけれど
男がいるのは確実だろうし
並みの男には鼻も引っ掛けないだろう
程なく着いたマンション前
交差点の赤信号に止めた足
何気なく視線を流せば
前の女は右に歩先を進めてマンションの中に消え失せた
お向かえさんね…
呑気な俺はそんな事を思ってたような
やがて変わった信号に、気にも掛けずに自宅に戻りいつもの日常的な生活
この時はまだ、彼女の存在に価値なんて見い出せなかった
ただ、眠気に誘われた時
ふと浮かんだのは、あの女
ショートしそうな脳内に
その理由を考えるなんて無理な話な訳で
浮遊していく感覚に、意識は沈んでいった
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