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最初の接触から1ヶ月
何度か彼女を見かけるのは仕事終わりの7時過ぎ
昼間の明るい日差しの前に立つ姿は見た事が無かった
その日は雨が降ってきて
行き交う歩道には家路を急ぐサラリーマンに、遊びに夢中の高校生の集団
その中のスーツ姿の女は彼女じゃなくて
何、気にしてるんだと呆れながら着いた自宅前
向かえの歩道には女
顔は見えないけれど、姿形で誰かは分かった
スーツに雨の染みを滲ませて
ヒールを履いた足元も濡れていた
走ってきた車のライトに映し出された彼女の顔は
髪からの雫が頬に流れて
表情がないまま泣いているような…
一瞬だけ浮かんで消えた彼女の横顔
それがとても綺麗で、儚げで
急速に芽生えた感情が俺の中に堕ちて
チクリと傷んだ胸奥に記憶が掘り起こされて
次々に浮かんだ画像は所々ノイズがチラつく
俺は彼女を知ってる…のか?
確信にならないのは目の前の女の違和感
記憶の糸をたぐり寄せようと焦点を彼女に引き戻せば
重なり合った視線
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