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ずっとそこに居続ける訳にも行かず
一瞬立ち止まった歩を進めて自室に急いだ
濡れた上着はそのまま床に落とし
戸惑う事なく向かった先はベランダ
見下ろせば、雨の音だけ
それでもそこから動く事なく、向かいの何軒かの真っ暗な部屋を眺めて
ほんの少しだけの時間で灯ったのは意外に近い距離
人影が横切ってまた窓に現れたのはさっき外で見たまま
風邪ひくぞ
いらぬ心配までして、その動きを見守る
やがて閉じられたカーテンに、もう一度だけ煙草を吸ってから室内に戻った
意外に冷えていた身体に熱めのシャワーを浴びて
答えが出ない問いだけが頭の中を往復する
浴室から出て洗面所に映る自分の姿
モテないわけじゃないけれど、可もなく不可もなく
隣に並ばせたのは彼女の姿
似合わない…か
肩に掛けていたバスタオルで乱暴に髪を拭き上げて
冷蔵庫からは冷えたビールを取り出して
窓からもう一度、彼女の部屋を見下ろした
確認出来るのは部屋の灯りだけ
腹、減った
早々に彼女から切り上げて缶ビール片手にお湯を沸かして
その日は、あえて意識しないように彼女を隅に追いやった
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