揺らぐ男

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彼女に近寄りもせずに、それでも出会えば景色の一部になる自分 確実に意識してるのは俺だけ 「どうしたんだよ、シケた顔して」 叩かれた背中は無防備だったからか、痛みが響いた 隣の同僚の男を睨みつけたものの、どうやら通じていない奴はニヤリと笑って 「何?女か?」 「…別に」 ふーん、と意味深な相槌を返してきて 聞きもしないのにペラペラ話し出す同僚 「今さ、気になる女がいるんだけど これがすげぇいい女で」 年も同じで何かとウマが合うだけに、今までなら気軽に女の話題を提供してきたけれど 彼女の事を話す気にはならなかった この頃には自覚していた彼女への想い 20代後半にして、今までの誰よりも感じた事がない だから軽々しく口に出したくはなかった 適当な相槌を打ち、興味ない話しに上の空 気になる彼女を思い浮かべ消して 「インパクトが凄いわけよ」 連れ立つ隣には若干、興奮気味で下心見え見え 週末の仕事終わりで更に浮かれているのかもしれないけれど お気楽な奴だなと 引き気味でいたら震えだしたポケットの中
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