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早く治そうと目をつむる。布団からは染み付いたセンセイの香水の匂いがした。
甘い匂いに甘い行為を思い出す。そんな甘美な時間が浮かび上がり、その瞬間は体の不快感は消える。そして眠る。再び関節の痛みで目が覚めて、寝返りを打ち、悶える。
うつらうつらとする。夢の中でセンセイが私を抱く、でも狸が現れてセンセイとキスをする。直後、私の体は落下したような感覚に襲われて目を覚ます。狸が笑う、センセイが笑う……。今度は吐き気で目が覚める。時計を見れば夜中の1時。
「苦しい……」
熱は40度近い。病院に行こうか、救急指定の病院が分からない。タクシーを呼ぼうか、その前に支度も出来ない。立てない。
同期に連絡しようかと思ったが、今は真夜中。それより気付かれそうで怖かった。だって布団にも部屋にもセンセイの匂いがするから。
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