第四章

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🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸 その夜も、彼らは鬼桜の下に立っていた。 だが、花はもう殆ど散っていて、地面は桃色の花びらで覆われている。 「――薊」 唐突に名を呼ばれ、薊は朱彦を見た。 「何ですか父上」 「お前はもう家に帰れ」 「え……? 何故です」 不思議そうに尋ねる薊に、朱彦は厳しい口調で言った。 「いいから早く家に帰るんだ」 薊は納得の行かぬまま、家へと戻った。 薊の姿が見えなくなり、暫く二人共無言のままだった。 「……沙月」 朱彦のその呼び掛けと同時に、青白い月が雲で隠れる。 辺りが、一瞬にして闇に包まれた。 「――“幸せ”は来ないよ」 朱彦は呟いた。 「俺達にも、幸せは来ない」 「……ええ。分かってるわ朱彦」 ――茂みに隠れていた村人達が、一斉に二人に襲い掛かった……――。 🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸 ……外の様子がおかしい。 薊がそのことに気がついたのは、小屋に戻って少し経った頃だった。 高台の辺りが、妙に騒がしい。 何故か胸騒ぎがし、薊は急いで桜木のもとへと駆け付けた。 そこには、信じられない光景が広がっていた。 ――大勢の村人が寄って集って、沙月と朱彦を襲撃していたのだ。 二人は、ただされるがまま地に倒れ伏している。 薊は村人を押しのけ、二人に駆け寄った。 「父上! 母上!」 ……二人の身体は既に斧やら刀やらで斬り刻まれ、血で真っ赤に染まっている。今にも絶えそうな虫の息だった。 「……薊……何故、来た……」 朱彦が口を開いた。薊は泣きそうになりながら朱彦の身体を抱え上げる。
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