序章

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桜の木に近付くな 桜の木に近付くな 己が命召し取るぞ 狂い咲きの桜の木――…… それは、沼淵村に昔から伝えられている鄙歌。 「又七。あの桜の木に決して近付くでないぞ」 幼い頃からずっと、父親に言いつけられてきた。 「呪われて死んだ者もおるのだからな」 幼い頃の俺は、その呪いがただひたすら怖くて、父の言いつけを必死に守っていた。あの桜に誘われなければ、近付く筈などなかった。 桜の木に近付くな 桜の木に近付くな 己が命召し取るぞ その鄙歌が怖くて、仕方が無かった。
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