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その夜、薊が寝静まった頃、沙月と朱彦は深刻な表情で話をしていた。
「……それだけは駄目よ。それは禁忌だわ」
「ならお前は……薊が死んでもいいって言うのか。人間に殺されてもいいって言うのか? 俺はそんなことは認めない」
「私もそこまでは言っていないわ。……でも、それはあの子にとって幸せなことなのかしら。貴方も分かっているでしょう!? あの子は……」
「今使わないでどうするんだ」
朱彦の目は真剣だった。
沙月はその眼差しを見て、何も言えなくなる。
「――俺は、例え禁忌だと言われてもこれを使う。沙月も協力してくれるよな」
朱彦の右手には、小さな瓶に入った赤黒い液体があった。
――不老不死の仙薬だと言い伝えられている、人魚の血……。
🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸
朝、沙月はいつものように朝食の準備をした。
一人分減った、三つの盆。
茶碗に白飯をつぎ、汁を注ぐ。
――沙月の手は、ひどく震えていた。
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