第四章

13/17
前へ
/118ページ
次へ
その夜、薊が寝静まった頃、沙月と朱彦は深刻な表情で話をしていた。 「……それだけは駄目よ。それは禁忌だわ」 「ならお前は……薊が死んでもいいって言うのか。人間に殺されてもいいって言うのか? 俺はそんなことは認めない」 「私もそこまでは言っていないわ。……でも、それはあの子にとって幸せなことなのかしら。貴方も分かっているでしょう!? あの子は……」 「今使わないでどうするんだ」 朱彦の目は真剣だった。 沙月はその眼差しを見て、何も言えなくなる。 「――俺は、例え禁忌だと言われてもこれを使う。沙月も協力してくれるよな」 朱彦の右手には、小さな瓶に入った赤黒い液体があった。 ――不老不死の仙薬だと言い伝えられている、人魚の血……。 🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸 朝、沙月はいつものように朝食の準備をした。 一人分減った、三つの盆。 茶碗に白飯をつぎ、汁を注ぐ。 ――沙月の手は、ひどく震えていた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加