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「――桜木の呪いなんて無い」
「……え?」
「呪いなんて無い。だから私もお前も死なない」
少年は、抑揚の無い薊の言葉に、小さく尋ねた。
「どうして……そんなこと分かるの?」
「私が殺しているから――だから分かる」
薊の唇は、勝手にそう動いていた。
少年は目を見開き、驚愕する。
「本当……? お兄ちゃんが……ってことは俺も殺されるの……?」
少年の声は…少しだけ震えているような気がした。
……そうだ。殺さねば。
とっくの昔に、心を捨てた筈だ。
桜木に近付いた彼を、生かしてはいけない。
薊は、腰の刀を手に取った。かつて父が使っていた、唯一の形見だった。
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