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あれ、そう言えば土方さんは?
一緒に此処に居た筈だよね。
私が来てから声を聞いてないんだけど……
「ねぇ、一。土方さんは?」
私が聞けば一はスッとある方向を指で示した。
その方向を辿れば川辺に腰掛けている土方さんの姿が。
成る程。
だから姿が見えなかったのか。
私は一にお礼を言ってから土方さんの方へ足を進めた。
「土方さん」
呼び掛ければ僅かに振り向き、また前を向く。
「何、感傷に浸っているんですか?
酔いましたか?」
「……別に酔ってねぇよ。
只、あの頃とは大分変わっちまったと思っただけだ」
一拍措いてから話し出した土方さん。
「あの頃。とは、試衛館の頃ですか?」
私の言葉に静かに頷く土方さん。
「あぁ。
あの頃は、毎晩誰かしらが酒を持ってきては宴だっつって呑み明かしてたな」
何処か遠い目をして語る土方さん。
「毎晩、毎晩呑みまくって。
勝っちゃんなんか『騒ぎ過ぎです!!』って、毎日ツネさんに怒られてた」
そこで一旦区切り、苦笑して続ける土方さん。
私は何も言わずに、只聞いているだけ。
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