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「い、嫌やわぁ~。
兄はんったら御上手なんやから~、兄はんにはウチよりも似合う御人が居るはずやで?」
いけない、いけない。
つい、素が出るとこだった。
は?とかもし言っちゃったら即バレじゃんか。
慌てて返したせいで少しぎこちなくなってしまった返事にも相手は気にしない。
まぁ、酔ってるしね。
「いや、お前以外にゃ居ねぇよ。
なぁ夏風。
お前、俺の女になれよ」
そう言って顔を近づけてくる男。
って、馬鹿かコイツ!
私は芸子であって遊女じゃない!!
キスなんか誰がやるもんか!!
「兄はん。
そう言うんは、遊女はんとやってくれな?
ウチは芸子やさかい、そう言うんは無理どす」
私がきっぱりと断れば、笑い声が聞こえる。
「あ~あ、フられちゃったね?馬鹿牛」
横で緩く一つに髪を纏めたイケメンの分類に入るであろう青年。
「残念でしたね、晋作」
優しそうな雰囲気の人。
肩より少し長い髪を結ばずにほどいている。
「まぁ、僕達の前でそれ以上やろう言うのなら半殺しにしますけどね?」
笑顔で恐いことを言うのは少し癖の付いた髪を上で結い上げている人。
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