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ポトリ…ポトリと、読み上げた便箋の上に大粒の涙を零す。
クシャクシャに歪んだトキオの顔は、それでも暖かな笑みを浮かべていた。
「ハハハ………いかにもコースケさんらしい手紙だな」
「………」
トキオと同じく大粒の涙を溢れさせながら、美優は黙って頷いた。
「少し歩こうか?」
「…………うん」
トキオは、タカトをまた肩に乗せ、海の家から砂浜の方へと歩いていった。
もちろん、その左腕に美優の両手を絡ませて。
「まさか、コースケさんも同じ血液型だったとはなー」
「知らなかったの?」
「ああ、なんも言ってくれなかった」
「…………そう」
すっかり色鮮やかな茜色に染った夕焼けを背中にして、翔生男と美優、そして天翔の3人はゆっくりと波打ち際を歩く。
そんな2人は、とても幸せそうに微笑みながら、そっと涙を零した。
10年前に交わした約束。
その約束を果たした翔生男と美優。
この先、この親子達は間違いなく幸せな人生を歩んで行くだろう。
どこまでも続く白い砂浜。
その砂浜に残された2人の足跡は、さざ波に流されていった。
完
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