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試しに浴室のドアに耳を寄せてみたが、
息を潜めているのか
水音すら聞こえない。
そっちがそうならと驚かせてやろうと力任せにドアを殴る。
瞬間、
バシャバシャっと激しい水音がして、
彼女が寝ていたのだと知る。
「寝るなよ。
ここに着替え置いとくから」
嫌味交じりに言うと「ありがとう」と罰悪そうな彼女の声が返ってきた。
彼女の声にちゃんと起きたのだと安心し、
俺は脱衣所を出てリビングへと戻る。
「溺れかけたのかな?」
お風呂の中で慌てふためく彼女を想像し、
思わず一人で笑ってしまった。
あまり笑わない俺がそれなのに
彼女のことになると、
つい笑ってしまっていることに気づく。
不思議なものだ……
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