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「ん……」
司さんの声が急に聞こえて優羽はビクッとした。
――起きたのかな?
「……コ……」
「?」
また寝言を言っているみたいだ。
優羽はフッと笑った。
「ハル……」
――春?
あれ、この寝言1日目も……
「ハ……ルコ……」
優羽は自分の血の気がサーッと引いていくのが分かった。
――春子?
女の人の名前……?
ズキッと痛みを感じた。
胸の痛みなのか頭の痛みなのか分からない。
優羽は司さんの方を再度見た。
カーテンから漏れる月明かりで司さんの顔がぼんやり見える。
悲しそうな顔をしていた。
――春子さん……て誰?
優羽は司さんに聞きたいことがもう一つ増えてしまった。
同時に不安がもう一つ増えたことを意味していた。
きちんと恋人だと確信と実感が持てない優羽は、自分がただ片思いをしているかのような錯覚をしてしまう。
――早く退院したいな。
そしたら、いろいろと思いだせるような気がするのに……。
優羽は、それが司さんともっと近づける近道のような気がしていた。
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