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「だって、もう捨てられてるかも知れないのに、そんな事考えられないよ」 「そうか…。そうだよね。…もし、もしもだけど結城先生と関係を続ける事になったら、今までよりもっと辛くなるよ。ほとんど会えないだろうし…何より彼女に顔も職場も知られたんだから」 「それは分かってる。その時はこの病院を辞めて身を潜めるしかないね」 「次、彼女に見つかったら本当に終わりだよ?」  唯は短く息を漏らすと眉を寄せてベッドにもたれ掛かった。 「...わかってる。あの彼女…マジ怖かった。女で外科医なんてかなりの気の強さだとは予想してたけど、あの迫力は本気で震え上がったわ」 「その状況で綾子よく生きて帰って来れたね。私だったら直ぐに逃げ出すな」 「でも…彼女の本当に怖いところは、和馬が絶対に自分を選ぶと確信してるとこだよ」 「きっと…彼女だって綾子の事が怖いんだよ…」   唯は目を伏せる私の顔を覗き込むと、ポンポンと肩を叩き微笑んだ。 「なんか弱いね、私って。昔と成長してないや…」 「誰だって本気で好きな人を失いそうになればそうなるよ。昔の…あのボロボロだった綾子とは違う。恋を重ねてきた分、辛い思いをしてきた分、絶対に成長してる。大丈夫、きっと自分で答えを見つけられるから」 今まで、ずっと一緒にいてくれた親友の言葉が胸に染み込んでくる…  「唯……ありがとう…」 滲み出した涙が、自然と一粒頬を伝った。
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