2/9
前へ
/23ページ
次へ
待ってた?…。 私は身体中の血の気が引くのを感じ、一歩も動けない足が震え出す。 「ねぇ、あなた和馬の浮気相手なんでしょ?私がいない間に、この部屋に上がり込んでたのは、あなたよね?神崎さん」 私の目を真っ直ぐに見つめ、彼女は冷静とも言える静かな口調で言葉を放った。 ど...どうして私の名前を?! 何が起こってるの?… 状況が掴めず頭が真っ白になる。 彼女の落ち着いた口調と冷ややかな視線に捕われ、乾いた唇を震わせ、立ち竦むことしかできない。 「綾子…なんで来たんだ…」 唇を歪め、喉から絞り出した様な声を発して、彼女の背後から現れた彼の姿が目に飛び込んできた。 えっ?…なんで…来たんだ?。 愛する人からの言葉に愕然とする。 私の表情を見て、何かに気づいた様に、和馬は彼女に視線を移した。 彼女は引きつる和馬の顔を見つめ、頬に触れる長い黒髪を耳に掛けるとクスクスと笑い始めた。 「この人を呼び出したのは私。神崎さん、あなたと昨夜からメールしてたのは私なの」 言葉と共に余裕の笑みを見せる。 「じゃ、そろそろ説明してくれない?二人の関係を。和馬、そして神崎…綾子さん」 腕を組み、横の壁にもたれると、私と和馬を交互に睨み付けた。 静かな…重苦しい沈黙が流れる。 目の前で起こっている現実が、まるでドラマを見ているかの様な錯覚に捕われる。 喉の渇きで何度も唾液を飲み込んだ。 足元から和馬に視線を移すと、彼は唇を噛み、言葉を探しているのか、床を見つめ深刻な表情を見せている。 「梨花が綾子を呼び出したって事は、綾子の存在を知ってたんだよな?梨花…どうして…」 冷ややかに私を睨み続ける彼女を見つめ、和馬が沈黙を破った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

416人が本棚に入れています
本棚に追加