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待ってた?…。
私は身体中の血の気が引くのを感じ、一歩も動けない足が震え出す。
「ねぇ、あなた和馬の浮気相手なんでしょ?私がいない間に、この部屋に上がり込んでたのは、あなたよね?神崎さん」
私の目を真っ直ぐに見つめ、彼女は冷静とも言える静かな口調で言葉を放った。
ど...どうして私の名前を?!
何が起こってるの?…
状況が掴めず頭が真っ白になる。
彼女の落ち着いた口調と冷ややかな視線に捕われ、乾いた唇を震わせ、立ち竦むことしかできない。
「綾子…なんで来たんだ…」
唇を歪め、喉から絞り出した様な声を発して、彼女の背後から現れた彼の姿が目に飛び込んできた。
えっ?…なんで…来たんだ?。
愛する人からの言葉に愕然とする。
私の表情を見て、何かに気づいた様に、和馬は彼女に視線を移した。
彼女は引きつる和馬の顔を見つめ、頬に触れる長い黒髪を耳に掛けるとクスクスと笑い始めた。
「この人を呼び出したのは私。神崎さん、あなたと昨夜からメールしてたのは私なの」
言葉と共に余裕の笑みを見せる。
「じゃ、そろそろ説明してくれない?二人の関係を。和馬、そして神崎…綾子さん」
腕を組み、横の壁にもたれると、私と和馬を交互に睨み付けた。
静かな…重苦しい沈黙が流れる。
目の前で起こっている現実が、まるでドラマを見ているかの様な錯覚に捕われる。
喉の渇きで何度も唾液を飲み込んだ。
足元から和馬に視線を移すと、彼は唇を噛み、言葉を探しているのか、床を見つめ深刻な表情を見せている。
「梨花が綾子を呼び出したって事は、綾子の存在を知ってたんだよな?梨花…どうして…」
冷ややかに私を睨み続ける彼女を見つめ、和馬が沈黙を破った。
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