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彼女が何を、どこまで、どうして知っているのかが分からない。 和馬の反応を見ると、彼も同じだと分かった。 しかし、私をここに呼び出したということは、確信があったに違いない…。 私に向けられた刺さるような視線は和馬へと移された。 「今は私が質問してるのよ。ちゃんと説明しないと、私は何も答えない。言っておくけど、嘘はつかないで。嘘ついても無駄だから」 彼女は和馬を見てピシャリと言い捨てた。 そして、彼女は私に視線を移し鼻で笑う。 「このお嬢さん、怖じ気づいちゃって言葉が出ないみたいだから、和馬から説明して。今更『関係は無い』なんて言わないでね。二人が友人以上の関係であることは、昨日この人が送ってきたメールで分かってるから。この状況だから、認めざるを得ないだろうけど」 和馬は昨日のメールの内容を知らないから、下手な言い訳はできない。 「…梨花すまない。…綾子と俺は半年前から付き合ってる」 和馬は覚悟を決めたかの様に、その言葉を口にした。 冷ややかな表情を保っていた彼女の口の端は大きく歪んだ。 「半年も前から?この女と付き合ってどうしたいの?まさか、私と別れてこの女を選ぶとか言わないでしょうね?そんな事したら、どうなるか分かってるわよね?」 彼女は喉の奥で絞り出すような低い声色で和馬に言葉を投げつけた。 和馬は彼女から視線を逸らすと、暫く黙って彼女の立つ壁をじっと見つめていた。 そして、伏せた目を上げると彼女に視線を向けた。 「俺は梨花と別れるつもりはない」 私に背を向ける彼は、そう言葉を返した。 分かってた事でも、この状況でそんな言葉を口にするなんて…。  彼女は深く溜め息を吐き、もたれていた壁から背中を離すと私に視線を移した。 「だったら、この人と別れて。今すぐに!」 「…今すぐって…」 「そんなの当たり前でしょ!私の目の前で、この関係を終わらせて!」 梨花さんは戸惑いを見せる和馬を横目で睨み付けた。 
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