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隅々まで掃除機を掛け、絨毯を這うようにして入り込んだ髪の毛をチェックした。
虚しさを押し殺し、悲しみを抑え込み、ただ自分の存在を消す事だけを考え淡々と部屋を動き回る。
ベッドに膝を乗せると私が持ち込んだ枕を大きな袋に入れた。
そしてシーツを剥がそうとマットレスの端に手を掛けた。
和馬と私が身体を重ね続けた場所。
二人が抱き合い何度も朝を迎えたこの安らぎの場所…。
二人交わる匂いも…気配も…全てが消されていく…。
私の存在が消えていく――――
私の気配が消えたこの部屋で、明日…梨花さんが和馬に抱かれるんだ…。
このベッドで…
梨花さんが和馬に抱かれる…。
嫌だ…
嫌だよ…和馬…
そんなのイヤだ!
剥がし掛けたシーツを握りしめ、倒れ込むようにベッドに顔を伏せた。
『梨花さんを抱かないで!』
シーツに顔を埋め悲痛の声をあげる。
溢れる涙はシーツに染みて冷たく頬に当たった。
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