9月7日

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隅々まで掃除機を掛け、絨毯を這うようにして入り込んだ髪の毛をチェックした。 虚しさを押し殺し、悲しみを抑え込み、ただ自分の存在を消す事だけを考え淡々と部屋を動き回る。 ベッドに膝を乗せると私が持ち込んだ枕を大きな袋に入れた。 そしてシーツを剥がそうとマットレスの端に手を掛けた。 和馬と私が身体を重ね続けた場所。 二人が抱き合い何度も朝を迎えたこの安らぎの場所…。 二人交わる匂いも…気配も…全てが消されていく…。 私の存在が消えていく―――― 私の気配が消えたこの部屋で、明日…梨花さんが和馬に抱かれるんだ…。 このベッドで… 梨花さんが和馬に抱かれる…。 嫌だ… 嫌だよ…和馬… そんなのイヤだ! 剥がし掛けたシーツを握りしめ、倒れ込むようにベッドに顔を伏せた。 『梨花さんを抱かないで!』 シーツに顔を埋め悲痛の声をあげる。 溢れる涙はシーツに染みて冷たく頬に当たった。
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