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「雨がまた強くなってきたから運転気を付けてね」
小さなため息を落としながら、ドアに手を掛けた。
「日曜日の勤務はなに?」
ドアを開けようとした瞬間、和馬の呼び止める声で振り返った。
「今日から夜勤が2日続いて…日曜日は休み」
「そっか。なら日曜日に連絡する」
「…連絡するって…梨花さんは?」
「昼過ぎには実家に帰るらしい。そしたら電話する。なんか美味いものでも食いに行くか?」
和馬は煙草の灰を指でトントンと灰皿に落としながらニッコリ笑った。
「うん!私、美味しい中華が食べたい!」
和馬の言葉で一瞬にして笑顔が溢れた。
「了解。その後は美味いワインを飲み行くか」
「うん!行く行く!外食なんて久しぶりだよね」
「そうだな。俺もずっと忙しかったしな」
無邪気にはしゃぐ私を見てクスリと笑った。
「綾子…梨花がいる間はメールもできないけど…ごめん」
和馬は煙草の火を消すと目を細め呟いた。
「そんなの…分かってるよ。下手に連絡とって梨花さんに知られたら大変だもんね」
私は彼の横顔を見つめると、笑顔を作り頷いた。
「…そろそろ行った方がいいぞ」
和馬はフロントガラスに視線を移した。
夜勤ナースと思われる、傘をさした人影が疎らに入り口へと歩いて行くのが見えた。
「うん。行ってくる。…じゃあ日曜日」
人影が切れたのを見計らって車を降りた。
大粒の雨が傘を叩きつける音が耳に響く。
私は和馬の車が見えなくなるのを見届け、一息つくと、傘を握りしめ、入り口のある渡り廊下まで走った。
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