ボタン

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いつ。なぜ。どうして それらの問いは全て無意味だ ある日、僕らの世界の植物は一斉に進化をとげ、あらゆるモノに擬態を始めた 最初がいつなのか誰も解らなかった。例えば今使っている携帯電話がマリーゴールドだったとしても、普通に使えるのなら気付く事はない 問題は種をつけた後、擬態をやめて枯れてしまう事にあった しかし、それでも僕らはちょっと困ったなぁくらいで普通に生活をしていた 人間には意外なくらい順応性がある 列車が植物の擬態で途中で機能する事を止めて脱線事故を起こしても、飛行機に擬態した植物が拡散の為に人間を乗せたまま遥か上空へと消え去っても 僕らには対岸の火事でしかなかった。だって、僕らの周りでは深刻な事故は起きていない 深刻になったのは「牡丹」 人間の内臓に擬態し、種を拡散する時に人間の体を一気に裏返しにして種を外に出しやすくする植物がいる事に気がついた時だった 擬態した植物が牡丹なのかどうかは知らない ただ、裏返って真っ赤な血や肉と内臓を広げた姿が牡丹のようだとその名前を付けたらしい この裏返りを「牡丹」と言うようになってから、この擬態以外に「ボタン」と言う単語は使われなくなったけど それもどうでも良い事だ
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