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僕には7歳年下の妹がいた 「牡丹」が世界的に流行するようになると、僕らの両親は「牡丹」のない世界を目指すと窓のない古い船に仲間と称する人々と乗り込んで行ってしまった つまり、僕らは捨てられたのだ。世界には僕らみたいな子どもは沢山いて、珍しい事じゃないから親戚の人も近所の人も一通りの同情をしてから、家にほとんどお金がない事が解るとすぐに日常へと戻っていった 忘れ去られた僕らは父さん達が残していった食料や少しのお金で凌いでいたけど、すぐに底をついた 妹の中身が「牡丹」だと気付いたのは偶然だった 妹は生まれつき内臓が少なく、お金がなければ大人にはなれないだろうと言われてた それが、ある日を境に健康な人と何ら変わる事のない内臓がある事が病院の浮浪児の為の無料検診で解った 僕らは奇跡を信じない これ以上家族を失う事に耐えられない僕は、妹がいつ裏返るのか恐怖で眠れない日々が続いた  らーらーらー    るーるーるー 皆で行こう牡丹のない国   らーらーらー  るーるーるー 目隠しの船で行くよ希望の国 調子の外れた歌が聞こえる 父さん達を奪った宗教の歌行脚だ 「牡丹」になった妹に乗船資格はないけれど、普通は裏返る直前くらいまでは「牡丹」だと気付く術はない
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