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「お兄ちゃん。お兄ちゃん」 「牡丹」が内臓の擬態をするようになって妹は、ご飯も沢山食べるようになって元気に笑うようになった  らーらーらー 「お兄ちゃん。ふふふっ」 子どもの僕らに出来る仕事は無いから、善意の炊き出しとかっぱらいくらいでしか妹に食べる物をあげる事は出来なかったけど、妹はいつも僕が帰ってくると、父さんが残したボロ小屋から嬉しそうに飛び出してきた   るーるーるー 「お兄ちゃん。ふふ。うふふっ」 僕の周りを楽しげに走り回る妹を見れば、僕は妹を失って生きていけないと涙を溜めた  らーらーらー   るーるーるー 調子っ外れの歌が聞こえる ある日、お金持ちの家に空き巣に入った 留守だと思った家には、その家の旦那と痩せた狡そうな男の人がいて 僕に気付かなかった2人は「牡丹」が裏返らない方法を呑気に喋っていた 「裏返った人間から拡散する前の種を取り出すのです」 「もちろん、お嬢様の口に入る前にカプセルに入れるなどきちんと種に着いた血肉の処理はさせて頂きますよ」 「もちろん、一生与え続けないといけません。安いお薬ではございませんから、覚悟は必要になりますが……」 僕はその家をこっそり抜け出して、裏返りそうな人間を探す日々が始まった
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