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「お兄ちゃん。お兄ちゃん」 拡散した種が体に入らないように、気休めのマスクをして町をさ迷った 「うふふ。うふふっ」  目隠しの船で希望の国へ 人間は至るところで裏返っていたけど、裏返りの悲鳴が聞こえる頃には回収専門のマスクをした人がやって来るので、なかなかチャンスは訪れなかった  皆で牡丹のいない国へ 「うふふ。お兄ちゃん」 耳の奥から妹の声が聞こえる 「牡丹」が居なくなってしまったら妹が生きて行けなくなってしまう! 回収人の居ない「牡丹」を見つける事が出来たのは、お昼を過ぎた頃だった 妹と同じくらいの歳の女の子が、ギギギと悲鳴を上げながら裏返っていく ブチブチと血管や筋肉の切れる音とボキボキと骨の砕ける音と共に、鉄臭い血の臭いと汚物の臭いが広がって、釣られて僕も吐いてしまった 裏返りが終了すると、誰も来ないうちに湯気の出ている内臓を引っ掻き回して種を回収した 「お兄ちゃん。お兄ちゃん」 手に持った種は、走って帰っている間に血が乾いて拡散してしまった 「お兄ちゃん。大好き。うふふ」 指の間に拡散せずに残った種を妹に舐めさせると、妹は安心して眠ってしまった 最近の妹は栄養不足か裏返りの予兆なのか、寝込む事が多くなった 次からは種は乾かないように裏返った胃袋を切り取って包む事にした
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