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躯中に鳥肌が立って来たので、
耳を壁から離してみる。
壁をガリガリ削る音や、ぼたんの呟きは少しは小さく感じられると多可を括って居たが、
壁から離れても、穿つ音や謎の呟きは、鼓膜にこびりついた様にしつこく付き纏う。
私は滔々厭になり、
「何なの? 止めて頂戴!」
壁に向かって叫んだ。
すると、
此迄執拗に付き纏っていた壁の音や、呟く声は、水を打った様にピタリと止んだ。
私は、もう、良い加減、壁を削る音や、奇妙な声の事を忘れ普段の日常生活を取り戻そうと、
テレビを付けた。
暫くぼんやりテレビを眺めてはいたものの、ふと、「ぼたんて何だろう」頭の中に疑問が過ぎって来た。
忘れ様としたが、すればする程、疑問の反芻が益々強くなる……。
私は滔々、再び、壁に耳を当てた。
何も聞こえない。
此で良かったんだ。
安堵の溜息をついたその時。
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