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和馬からの連絡が途切れ一ヶ月が過ぎた…
願った偶然は叶うことなく、院内で顔を合わせる事もなかった。
このまま…私は消されて行くんだ…。
一緒に過ごした…無心に互いを求め合った時間はもう二度と戻らない…。
それを、どうやったら受け入れられるのだろう。虚しさと苦しみから逃れるために和馬を恨み、『忘れよう』と何度も自分に言い聞かせた。
日に日に憔悴していく自分を感じながらも、私はただ慌ただしい時間の流れに身を置き、繰り返される毎日を送っていた…。
あれから翔太とのメールが増えただけでなく、最近では会う回数も増えている。
色恋と感じる特別な言葉は全く無く、ふざけ合う友人であり…よき理解者であり…
今の私に癒しを与えてくれる存在…。
私は淋しさを紛らす為、一人でいることの苦しさから逃れる為、当たり前に優しさを与えてくれる翔太の存在を必要としていた。
「翔太、いつもごめんね。付き合わせちゃって…」
窓から視線を外すと、翔太の横顔を見つめた。
「俺は仕事終われば暇人だから。飯も一人で食べるより二人で食べた方が美味いし」
「今…翔太がいてくれて助かるよ…本当にありがとう」
運転席に体を向けると素直な気持ちを伝え軽く頭を下げた。
「何だよ~改まって綾子らしくない。本当は…俺が綾子に救われてるんだ…」
翔太は正面の信号が赤になるのを確認して、私に視線を移しポツリと言った。
「え?…翔太が私に?」
「そう言えば、まだ俺が彼女と別れた理由言ってなかったよな?」
「うん…聞いてない」
「実は…別れる半年前に彼女妊娠したんだ…それが別れの原因に繋がったんだ…」
翔太はゆっくりと話し出した。
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