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「あぁ、それから三ヶ月くらい経ってからかな…彼女の方から別れを切り出してきたんだ。『好きな人が出来たから別れて欲しい』って。相手は会社の先輩だって言ってた。同棲してた部屋から、さっさと出て行かれて…はい終わり」
「はい、終わりって…彼女を止めなかったの?」
「止められる訳ないだろ?自分が不甲斐ない奴だって思う罪悪感もあったし…」
翔太は苦笑いを浮かべ短く息を付いた。
「不甲斐無かったって後悔したなら手放さなければいいじゃない!彼女だって、止めてくれるの待ってたかも知れないじゃん」
思わず言葉を投げ掛けていた。
私…翔太に八つ当たりしてる…。
「ははは…相変わらずお前は痛い事をズバズバ言ってくれるよな。確かにそうなんだけど、 でも今はこれで良かったんだと思う。俺と居たらきっと辛い思いを引きずる…だから良かったんだよ」
翔太は微笑むと、いつもの様に病院の手前で車を止めた。
「…だからかな…今の綾子の側にいると自分が救われるんだ。誰かに必要とされる事に…って言った方がいいのかな?よく分かんないだろ俺って」
「…分かるよ…何となく…」
自分の犯した罪から解放されるために…誰かの側に居たい…見守ってあげたい…。
それがいつか、自分の心の傷を癒す道に繋がるのだから…。
翔太の言葉は…私の中でそう響いた。
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