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ついばむように触れていた唇が
その余韻を残して離れて行くと
彼はまた無表情になって
エンジンキーを回した。
無言のまま地下の駐車場から
走り出させた車は
まだ通勤ラッシュも収まっていない
車の流れに混ざり合って行く。
…私の事なら何でも知っている。
そう言って不敵に笑った彼と…
苦しそうに瞳を揺らした彼と…
2つの顔を持つこの人は…
もしかしたら私よりも
ずっと深い闇を
抱えているのかも知れない。
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