3522人が本棚に入れています
本棚に追加
動揺している彼女の顎を
指でそっと撫でてやれば
従順な彼女の瞳は
色を帯びてくれるのに。
ゆっくりと顔を近づけて行けば
静かにその瞳を閉じてくれるのに。
こんな形でしか
彼女に触れられない自分が
滑稽で自然と唇が弧を描いた。
控えめに塗られたルージュを
親指でそっとなぞりながら
込み上げる思いと必死に戦う自分は
どれほどこの女に溺れてるんだろう。
もっと…
俺に溺れて…
…いや、ダメだ…。
…彼女は…。
心の中で葛藤を繰り返し
クッと唇を噛んでから
彼女の耳元で
意地悪に言葉を囁いた。
「…キス…
して下さいって言ってみな?」
最初のコメントを投稿しよう!