迷走

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動揺している彼女の顎を 指でそっと撫でてやれば 従順な彼女の瞳は 色を帯びてくれるのに。 ゆっくりと顔を近づけて行けば 静かにその瞳を閉じてくれるのに。 こんな形でしか 彼女に触れられない自分が 滑稽で自然と唇が弧を描いた。 控えめに塗られたルージュを 親指でそっとなぞりながら 込み上げる思いと必死に戦う自分は どれほどこの女に溺れてるんだろう。 もっと… 俺に溺れて… …いや、ダメだ…。 …彼女は…。 心の中で葛藤を繰り返し クッと唇を噛んでから 彼女の耳元で 意地悪に言葉を囁いた。 「…キス… して下さいって言ってみな?」
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