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そんな威圧を受けながらも俺の唇は…ただ歪んだだけ
「この、いあつ…や、め」
必死に動かした唇で言葉を紡いでいく。英雄は道端に転がっている狐の死体を見るかのような目で俺を見ながらフッと圧力を消してくれた
息を大きく吸って吐いた。汗が流れているのがはっきりと分かった
「…お前は俺の言葉を鵜呑みで信じるのか?」
会って間もない俺の言葉だぜ?長年連れ添った恋人ならいざ知らず
英雄は軽く笑った
「昔の俺なら信じなかっただろう。だが俺も色んな経験を…させられたからな」
……よく分からんが信じるみたいだ
信じられるのに悪い気はしないが…正直に言えば信じられない方が良かった
本人でさえ…信じていないんだから
「…入り口付近で隠れてる奴。出てこい」
…は?
突然の言葉に、新たな存在がいると思われる方向に視線が移る
口を開こうとした矢先。こんな廃墟のような所にいる驚き
何より英雄はどうして気付いたのか、が頭を埋めた
「偶然って恐ろしいですね」
出入り口、その横が切り刻まれて崩れた。其処に立っているのは盾と剣を持った人
それを確認すると英雄は笑った
「マジか!!何でこんな偶然がおきるんだよ!!…“勇者様”よぉ?」
「その呼び方止めてくれませんか?恥ずかしい」
「そうか?お前にピッタリの敬称だと思うが」
顔馴染み…?のわりにはお互い敵意を剥き出しのような…
「じゃあ改めて自己紹介をしようじゃないか…お互いにな」
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