涼の優しさ

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「涼、私っ……やっぱり涼とは付き合えないよ……っ! だって私はっ……直太と……っ」 「知ってるよ」 そう言って涼の右手の人差し指が唇に触れた。 いつの間にかさっきまでキッチンに居たはずのお母さんと、お姉ちゃんの姿がなくなっていた。 多分気を利かせてくれたのかもしれないね。 「由芭ちゃん。お願いだからもう過ちは繰り返さないで? 人のモノに手を出したからって、キミは何を得たの? キミに残ったモノなんか何もないでしょ?」 「だって私……寂しかったのっ! 誰も私を必用としていない気がして……寂しくて……人のモノが欲しくてたまらなくて……っ」 そう……いらない物なのに、欲しくなるように…… 使わないのに、買ってと強請る子供のように…… 私は人のモノを欲しがっていた。
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