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もう一度視線を春子に移す。
彼女の目はまっすぐ花火に向けられている。
「わぁ…。」
花火の光にチカチカと照らされて、彼女の笑顔がコマ送りのように映し出される。
ぼーっとその顔に見入る。
「春子…。」
俺と椎名優羽にしかわからない名前を、声は出さずに息だけで呼ぶ。
正直自分が気持ち悪い。
おかしいと思う。
「花火、きれいですね。」
隣の女が言う。
「そうですね。」
そう答えて、残っていたビールを一気に飲み干した。
さっきの写真はおそらく俺に送られてくるだろう。
この空間を共有しているにも関わらず。
「はは…」
花火に目を戻し、また頼りなく笑った。
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