自覚

2/14
3827人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
ぼーっとパソコンのデスクトップを見たまま何分過ぎただろう。 頭の後ろで手を組み、足を交差してデスクの上に乗せ、昨夜送られてきていた花火の画像に見入る。 朝方帰ってきて少し眠り、今のどかな日曜の昼下がり。 窓を全開にしているのでカーテンが少し揺れる隙間から湿気を帯びた風が入ってくる。 送られてきたメールには、 『花火行ってきました。 すごくきれいでしたよ。 司さんにもおすそわけ。』 というコメントと、きれいな3尺玉の花火の画像が添付されていた。 「きれいだねぇ。」 できれば、昨日あの場所で君に言いたかったんだけど。 「はは。乙女か俺は。」 一人でつっこみ、一人でまたため息をつく。 昨夜勝手に春子のことを好きだと自覚したのも、勢いで大倉に相談したのも、おそらく花火と酒のマジックだろう。 春子に対して好感を持っていることは間違いない。 じゃなければこんなに長いことメールはしない。 ただ、昨夜はシチュエーションがシチュエーションだっただけに、勝手にそれ以上の感情だと自己変換してしまっただけだ。 そしてその流れで大倉に暴露してしまっただけだ。 …にしては、この花火の画像を見ていると何度も春子のあの横顔がちらつく。 あの子は実は近くで見れば見るほどかわいい。 「あーっ、もう!」 頭を片手でくしゃくしゃにして、椅子の背もたれに体重をかける。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!