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暑い。 ミーン、ミーン、ミー…ン、ミー…。 蝉の声が体中を支配し、暑さで何も考えられない。 蝉のうるささに慣れ過ぎて、逆に静寂すら感じる。 初盆の法要を済ませ、今、母親の墓の前に一人たたずんでいる。 正直、俺は母親の死をまだちゃんと受け入れられていない。 あの時、母親を一人で帰してしまった後悔と自責の念が、未だべっとりと体にまとわりついている。 カタン。 「清貴…君?」 「…あ。」 喪服を着た女が一人、こちらに歩いてくる。 おふくろにどことなく似た顔。 「…叔母さん。」 母親の妹だ。
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