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「春子っ!!!」
耳が、喉が、声が、裂けんばかりの叫びを上げて外へ出る。
助手席側。
春子が気を失って倒れている。
「春子っ!」
もう気が狂いそうだ。
何が何だか分からない。
春子の背中を自分の腕に抱きかかえた。
初めて春子に触れるのがこんな場面だとは夢にも思わなかった。
ドロリと、春子の白く綺麗な顔を赤が流れていく。
「あ、あ…。」
頭を支えている自分の手が濡れている。
ゆっくりとその掌を見る。
ぬるりと生温かい、赤い紅い血液を、つけっぱなしの車のライトが、鮮やかに照らし出す。
「は、ハル、はる、こ…。
ハル…。
あ、あ…。」
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