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春子は比較的落ち着いていた。
思い出そうとしているのか、やたらと俺を見る。
不審な視線のようでもあり、興味津々な視線でもある。
他人を見るような目であることには間違いない。
あんまりじろじろ見ないで欲しい。
母親が、俺を忘れた春子に呆れたような口をきく。
春子は、何度も何度も俺と母親を交互に見る。
きょろきょろするリスみたいだ。
「……。」
母親の話を聞きながら、ちょっとだけ、春子の顔がはにかみ出したような気がした。
……ちょっと待って。
変な誤解し出してない?
――バタン。
あろうことか、春子の両親は俺と春子を2人にして病室を出て行った。
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