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『あんたも報われない恋愛してるのね。』
憐みの顔で俺を見る。
――あぁ、俺を戒めにきたんだな。
いい気になって、春子に手なんか出したから。
母親は上から静かに笑う。
恨みなんて既に毛頭無い。
あるのは懺悔と感謝の気持ちだけ。
ありがと。
ごめんね、おふくろ。
大丈夫だよ。
もう少ししたら、春子とちゃんと離れるよ。
もうこれ以上情けない姿を見せないよ。
俺も静かな笑みを返した。
壁の握っていた凸部分を自ら離す。
暗くて深いところへ、音もせずにゆっくり落ちていった。
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