一週間(Ⅰ)‐2

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『あんたも報われない恋愛してるのね。』 憐みの顔で俺を見る。 ――あぁ、俺を戒めにきたんだな。 いい気になって、春子に手なんか出したから。 母親は上から静かに笑う。 恨みなんて既に毛頭無い。 あるのは懺悔と感謝の気持ちだけ。 ありがと。 ごめんね、おふくろ。 大丈夫だよ。 もう少ししたら、春子とちゃんと離れるよ。 もうこれ以上情けない姿を見せないよ。 俺も静かな笑みを返した。 壁の握っていた凸部分を自ら離す。 暗くて深いところへ、音もせずにゆっくり落ちていった。

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