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あぁ、俺は残酷なことしてるな。
部屋にまで上げといて。
こんな綺麗な女にここまで言わせて。
こんなに泣かせて。
……それでもなお、この目の前にいる女が春子ならいいのにって思って。
結局、無駄なんだ。
いくら仕事や酒で紛らわしても。
ちょっとしたことで、こういう不意をついて、飽きもせずにまた、ここへ戻ってくる感情。
誰も代わりにできない。
春子じゃなきゃ、……無理。
泣き疲れた涼は、無言で帰っていった。
俺も「ごめん」の一言以外、何も言わずに帰した。
後味の悪さに吐き気を覚える。
同時に、あらがいようのないこの気持ちに、半ば諦めに近い溜め息をこぼした。
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