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とある教会の祭壇前に一組のカップルと神父。
『汝、この者を妻とし、健やかなる時も病める時も共にすることを誓うか?』
神父の声をどこか遠くに聞いている青年がいた。
『はい、誓います』
青年は神父の前に立つ新郎ではなく、この結婚式に招待客であった。
『汝、この者を夫とし、健やかなる時も病める時も共にすることを誓うか?』
彼の名前は波瀬久幸(ハゼヒサユキ)。
『誓います』
この新婦の友人であった。
いや、正しくは新婦である彼女に想いを寄せていた青年である。
(どうして君を好きになったんだろう?)
幸せそうに笑うその二人を複雑な気持ちを抱えながら遠くに見ていた。
(あぁ、どんな顔をオレはして君を見送れば良いんだろう?)
そんな思いが彼を包んでいた。
複雑な彼を置いていくように式は進行していく。
気付けば、教会の外にいてライスシャワーを浴びながら新郎が、彼女を抱き上げ、教会の階段を降りていく姿を見つめていた。
『おめでとー』
周りの祝福する声に新郎と微笑む彼女。
(幸せなんだね)
彼女のその笑顔に今までの複雑な気持ちが嘘のように解けていく。
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