秘密の色

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 枕に顔を埋め、乱れた呼吸が整うのをひたすら待った。  ……ひどい……。  平静に戻りつつある思考回路が最初に導き出した言葉が、それだった。  一体何がひどいのだろう……と思ったが、その言葉が浮かんだ理由にあたし自身の意識がまったく追いついていなかった。  カチリ、と背後でライターの音がする。  ジリジリ……と何かが小さく燃え燻る音がして、やがて男の人の溜め息が響いた。あたしは何とか振り返り、そこにいる人を恨めしげに見つめる。  すると彼はすぐにあたしの視線に気付き、ニヤッと笑った。  あれから、酔ったあたしを抱きかかえるようにして、虹原さんは近くのホテルに入った。  待って、という間もなかった。  さっきまでは吐き気がして真っ青な顔をしていたあたしの顔色がすこぶるよくなっているのを見て、選んだ部屋に滑り込むようにしてドアを閉めた。  そのまま戸惑うあたしをベッドに押し倒し、シャワーも何もお構いなしに──最後まで。 .
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