秘密の色

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「ああ、今日もかっこいい。付き合いたい」 「えっ」 「え?」  ゆりのその発言にぎょっとして、開けようとしていたパンの袋を落としそうになってしまった。  ゆりはポッキーの箱をバリッと開いてあたしを振り返る。 「なに?」 「え。あの。付き合いたいって……」 「そりゃそうでしょ。この顔から色んな切ない言葉が出てくるんだよ。愛してるーとかはいいから、それに繋がる複雑なこといっぱい言われたい……」  判るような、判らないような……。  ゆりは派手な外見の割に、意外と文学少女だ。今一番入れ込んでいるのが虹原岳なだけで、この娘は太宰だってもちろん読んでいる。前にも【人間失格】の映画に付き合わされた。 「脳みそ蕩かすようなこと言われた後、身体も蕩かして欲しい……」  ハフ……と意味ありげな溜め息をつきながら、ゆりはうっとりと画面の中の虹原岳を見つめていた。 .
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